言語聴覚士との個別活動では、様々な道具や玩具、お菓子等を使用して子どもと楽しみながら出来る活動を行い、ことばの発達を促すお手伝いを行っています。
ことばを育てる方法の1つとして絵本はとてもいいアイテムだと思います。
例えば赤色のカードを見て『赤』と覚える事も出来るかもしれませんが、赤色から連想される様々なイメージ を理解することは難しいですし、面白くないかもしれません。
絵本は身近にある物や子どもの好きな物をテーマとしている事が多く、子どもが興味を持ちやすい良いアイテムだと思います。
今回は言語聴覚士との個別活動での絵本の 活用方法について少しお話をしていきたいと思います。
言語聴覚士との個別活動で使用している絵本について
子どもの発達段階にあった絵本を選ぶ事はもちろんですが、子どもが興味を持ち楽しみながら読むことができる絵本を選ぶようにしています。
個別活動では、2~3冊の絵本を子どもに提示し、どの本を読みたいか子どもに選んでもらい、子どもが『読んでみたいな、面白そうだな』と思う絵本を使用するようにしています。
図鑑が好きな子ども であれば好きな図鑑を一緒に読み、その図鑑から『楽しい・面白い・何だろう』等のワクワク感を共有したり、1つ1 つに着目し「ここは黄色だね。形は三角に似ているね。面白いね」等言葉をかけながらことばの意味理解を深められるようにしています。
よく聞くご相談で、「絵本を読もうとしてもページをどんどんめくられてしまい読めない」というお悩みを聞くことがあります。
そんな時は、『今はページをめくることが楽しいのかな?』と考え、ページを好きなようにめくらせてあげると良いかと思います。
その際に、出てきた動物の名前を言いながら「猫さんばいばい~。 犬さんばいばい~」と子どもがページをめくるタイミングに合わせて言葉をかけてあげるのも良いかと思います。
子どもも大人のことばや動作を真似して、「ばいばい~」と言ったり、手を振る動作を行い、ことばや動作を使ったやり取りを楽しんでくれるきっかけになるかもしれません。
おすすめの絵本
ことばが出ない、少ない等ことばの発達にゆったりさがみられるお子さんと一緒に読む絵本は様々あるのですが、 よく使う物で子ども達の反応がいいなと感じるものは、ポプラ社出版、森あさ子作:『ぱかっ』/『くるっ』や、福音館書店出版、平山和子作:『くだもの』等です。

絵本の簡単な説明と、実際の個別活動の会話例をあげてみたいと思います。
- 『ぱかっ』/『くるっ』は、簡単なことばの繰り返しが続く絵本で、ページをめくる度に「ぱかっ」や「くるっ」 という動きやことばを繰り返し楽しむことが出来ます。
大人が絵本に合わせて身体を動かしたりしながら繰り返し 「ぱかっ」ということばと動作を楽しそうに行うと子どもも一緒になってことばや動作を真似してくれ楽しいを共有したり、ことばが出てくるきっかけを作ることに繋げる事が出来ます。

ST:「たまごさん たまごさん(絵本の文章) 誰かいるのかなぁ? こんこんこんってしてみようかな~。
(こんこんこんと卵を優しく叩く)
〇〇くんもやってみる?」
子ども:うなずく
こんこんこんと卵を優しく叩く

ST:「ぱかっ」(絵本の文章)
子ども:「ぱかっ!ぱかっ!」
ST:「ぴよぴよ~。ひよこさんがいたね~」
(イラストの様に身体を動かして見せる)
子ども:「ぴよぴよ~。ぴよぴよ~」
(イラストやSTの真似をして身体を動かす)
- 『くだもの』は、様々な果物がとてもリアルな描写で描かれており、果物のそのものと、果物を切って食べる状態にした絵が出てきます。
食べる状態になった果物には「さぁ どうぞ。」ということばが毎回添えられており、大人の真似をして子どもも一緒に「どうぞ」と言ってくれたり、「食べてみよう」と言って、もぐもぐ食べる真似を一緒に行い、楽しい、美味しい等を共有したり、ことばが出てくるきっかけに繋げる事が出来ます。

ST:「ぶどう(絵本の文章) 美味しそうだなぁ~。食べてみようかなぁ~。
(絵本から果物をつまみとるようにして食べる真似をする)
もぐもぐもぐ美味しいなぁ~。〇〇くんも食べる?」
子ども:うなずく
ST:「さぁ どうぞ」(絵本の文章)
(子どもに果物を渡す動作を行う)
子ども:果物を食べる真似をする

1枚目の写真のやり取りを他のページでも繰り返した後に
ST:「〇〇さんにもどうぞしてくれる~?」
子ども:うなずく
(他のページで大人がしていた方法を真似して大人に果物を渡す動作を行う)
ST:「ありがとう!もぐもぐもぐ、美味しいなぁ~。 もっと食べたいなぁ~」
子ども:(再度大人に果物を渡す動作を行う)
ST:「ありがとう!もぐもぐもぐ。桃甘くて美味しいね」
おすすめの絵本としてお話をさせていただきましたが、やはり一番大切なのは、子どもが興味を持っていて楽しい、読んでみたいなと思える絵本を使うことだと思います。
もしかしたら大人が読んでほしい本と、子どもが読みたい本は少し違うことがあるかもしれませんが、ぜひ子どもが読みたい本を一緒に読んで楽しい時間や感情を共有してみて下さい。
絵本に書かれた文字をただ一方的に読み聞かせるだけでなく、絵本を通した大人とのやり取りの中で、ことばへの興味を促すことにも繋がっていきます。
大人と子どもが一緒に楽しみながらことばを育てる良い時間になるかもしれません。